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読書雑論02|葉/太宰治

読書コラム、第2回は 太宰です。
本好きなら誰もが一度は通る道、青春のはしか 太宰治。
「人間失格」「ヴィヨンの妻」「斜陽」「走れメロス」等有名な作品ばかりですね。
今回紹介するのは、処女作品である短編集「晩年」の冒頭の作品、「葉」です。

初めての作品集の名前が「晩年」。初作品でもう晩年て .. 。
この短編集ですが、冒頭の「葉」は ほんと15分もあれば読めると思います。太宰を未読の方が これを読んでビビッとくれば 他の太宰作品も楽しめると思います。逆に、なんだこりゃ と思った方は太宰は合わないかもしれません。それだけ太宰っぽい言葉ぎっしりの短編です。 ちなみに厳密に言うと「葉」は小説ではありません。太宰がそれまでに書き溜めた原稿の中から、捨てがたい断片や言葉だけを切り取って繋げた つぎはぎの雑文です。 断片と断片に繋がりはないので、全体のストーリーも特にありません。
だけど、面白い。太宰の魅力、満載。
初見でも十分に面白いですが、太宰や文学全般の見識があると、より深く作品を楽しめます。 なお、これらの断片は もれなくネガティブとシニカルのオンパレードです。

冒頭はフランスの詩人 ヴェルレーヌの引用からはじまります。
「選ばれてあることの 恍惚と不安と 二つ我にあり」
「選ばれて..」と言い切れるってすごいです。選ばれている事は大前提であって、それ故に 恍惚と不安の葛藤で悩んでいます .. という事でしょうか。 選ばれている事を自覚し、尚且つその才能に悩む事ができるのは、天才の証です。
フランスの文豪 スタンダールは、名作「赤と黒」でこう言ってました。
「天才の特徴は、凡人が引いたレールに自分の思想をのせないことだ」と。

ではいくつか印象的な断片を 以下に紹介します。

白状したまえ。え?誰の真似なの?

生まれて初めて算術の教科書を手にした。ああ、中の数字の羅列がどんなに美しく眼にしみたことか。少年はしばらくそれをいじくっていたが、 やがて巻末のページに全ての解答が記されているのを発見した。少年は眉をひそめて呟いたのである。「無礼だなあ」

「お前は器量が悪いから、愛嬌だけでもよくなさい。お前は体が弱いから、心だけでもよくなさい。お前は嘘がうまいから、行いだけでもよくなさい」

知っていながらその告白を強いる。なんという陰険な刑罰であろう。

よい仕事をしたあとで 一杯のお茶をすする
お茶のあぶくに きれいな私の顔が
いくつもいくつも うつっているのさ。
どうにか、なる。

.. ざっとこんな感じです。
太宰がすごいのは「奇をてらった文章を、狙ってない」ように思わせてしまう所です。 太宰のフィルターを通せば どれだけ奇妙キテレツな変わり者の言葉でも、余計な邪推のカーテンなしに そのままこちらの胸に突き刺ささります。
ざっくりひとことで言うと、憎めない人。
だってこれだけ愚痴愚痴してるのに、実際は女性にモテモテで 小説は今なお万人に愛される人って、太宰治くらいなものです。

弱さをさらけ出すことは、弱い人にはできないことです。
太宰は愚痴愚痴言いながらも、本当は強かったんでしょうか。うーん .. どうでしょうね。

太宰治_晩年

教訓:
凡人が愚痴愚痴言っても、全くモテません。

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